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5 家に帰って

Penulis: あさじなぎ
last update Tanggal publikasi: 2026-08-03 19:29:07

 俊太を連れて家に向かいながら、私の気持ちは全然落ち着かなかった。

 途中で見かけた郁人と知らない女性。

 あの子、ずいぶんと若そうだった。私よりきっと年下じゃないだろうか。

 郁人は三十九歳だけれど、見た目だと若々しい。ぱっと見、爽やかに見えるし。

 私と出会った時も、十歳年上とは思わなかったもの。

 もやもやを抱えながら家に帰って、私は俊太に東雲さんから貰ったお菓子をあげる。

「今日は特別ふたつね」

 そう声をかけてお菓子が入った袋をふたつ、開けて渡す。すると俊太は、

「よっしゃー!」

 と、声を上げて私からお菓子を受け取り、テレビの前に座って動画を見始めた。

 その間に、私は洗濯物を取り込んで片づけたり、お風呂の用意などの家事をする。

 俊太の様子をキッチンから伺いながら、私は時計を見た。

 時間はもう五時半を過ぎている。

 郁人、帰ってこない。

 ジムに行くと帰りはいつも、六時近くだからおかしくはないんだけれど。

 でも今日見てしまったものを考えると、ジムに行っていないんじゃないかとか、どこに行っているのかとか気になって仕方ない。

 どうしよう。

 今まで怪しいところとかあったかな?

 記憶をとどるけれど、一度疑い出すとすべてが怪しく見えてくる。

 そもそも出産前や、そのあと、そんなにジムに通っていなかったような気がするし。

 いつからだろう。休みの日にはほぼ必ずジムに行くようになったのは。

 もやもやしていると、玄関があく音がする。

 その音に反応して俊太が立ち上がり、廊下側のドアの前に向かうのがカウンターキッチンから見えた。

「パパ!」

 と、俊太が喜ぶ声が聞こえる。

「ただいまー。俺風呂入るけど、俊太も入るか?」

「うん」

 その様子を聞きながら、私は心が痛くなる。

 子供がいるのに不倫とかするかしら?

 いや、子供がいようと関係ないか。するときはするし。

 十歳も年下の私にジムで声をかけてきたのは、郁人の方だった。だから年下が好きなのかもしれない。

 何でだろう、そう思うとなんだか気持ち悪くなってくる。

 郁人と私が出会った時、私、大学卒業して半年くらいだったな。

 考えれば考えるほど、心臓が痛くなってくる。

 夕食の支度を終えたころ、俊太がタオルを被っただけで出てくる。

「あーもう、ちゃんと拭かないと」

 私は慌てて俊太を捕まえて、タオルで頭と身体を拭いてあげる。

 郁人がお風呂に入れてくれるのはいいんだけど、俊太が先に出て郁人はしばらくしてから出てくるから、服を着せたりするのは私の役割だ。

 小さな事なんだけれど、服を着せるくらいしてくれてもいいじゃない、と思う時がある。

 それは贅沢な思いなのかもしれないけれど。

 俊太にパジャマを着せてしばらくしてから郁人が出てくる。

「あー、メシまだ? ビールある?」

 その言葉に一瞬むっとしてしまうけれど、子供の手前笑顔を張り付けて、

「今用意するから」

 と答えて、私は夕食の準備を始めた。

 今日の夕食は鮭のホイル焼きに、肉じゃが、マカロニサラダと味噌汁だ。

 私は結婚前、料理が苦手だったけれど二年、料理教室に通った。

 だから料理にはちょっとだけ自信がある。

 夕食中、俊太は一生懸命に今日あったことを話してくれる。

「運動会、玉入れするの! でね、踊るんだ!」

「へえ、そうなんだ。楽しみだね」

 そう答える私の方を向かず、俊太はパパの方を見る。

 郁人は話半分、という感じで頷き、

「そっかー」

 と生返事をするけれど、それでも俊太は嬉しいらしい。

「それでね」

 と、別の話を始める。

 その様子を見ると本当に心臓が痛くなってくる。

 もし郁人が不倫、していたらどうしよう。

 私、許せるだろうか。

 きっと場合によるだろうな。

 相手の女性が私よりもずっと若かったら? 私、許せないかもしれない。

 私は郁人の顔をちらっと見る。

 食卓の隅に置かれたスマホが気になるみたいで、やたら見ているような気がするけれど気のせいかな。

 問い詰めたいけれどそんなのできるわけがなくって、もやもやを抱えながら私は夕食を食べた。

 おいしいはずなのに、夕飯の味、全然わからなかった。

 私は俊太を寝付かせた後、私はリビングへと向かう。

 そこに郁人の姿はなかった。

 このマンションは三LDKだ。

 郁人がご両親から譲り受けたもので、少し古いけれど中はリフォームされていて綺麗だし使いやすい。

 寝室と、将来の俊太の部屋。あと一部屋は郁人の私物が置かれていてたぶんその部屋に引きこもっているんだろう。

 その部屋にはパソコンとかゲームがあって、FPSをときどきやっているらしい。

 私はあまりゲームはやらないし、趣味にはお互いに口を出さない。

 私は郁人の部屋の前に立つ。

 中から声が聞こえてくるけれど、何を言っているのかまではわからない。

 音声チャットかな。

 ときどきチャットしながらゲームをしているとは言っていたし。

 私は暗い廊下で、ドアの前に立ちつくして、ぎゅっと、自分の腕を掴んで息をついた。

 

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